出産前は、母乳育児に悩むことになるとは思いもよりませんでした。
なんなら、母乳は子どもを産めば勝手に出るものだと思っていました。
そんな私の考えは甘かったのだと、出産後身をもって感じさせられました。
いま振り返って、出産前に”うまくいかない”母乳育児を知識として得ておきたかったなという思いと、いま母乳育児で同じように悩んでいる方々に伝えたいことがあり、今回この記事を書きます。
以下、赤裸々に記載していきますので、ご不快に感じる方がいらっしゃったらごめんなさい・・・。
乳頭トラブル
まず、赤ちゃんの吸う力がすごく強いことに驚きました。
乳頭が非常に痛く、何度も切れて血が出ました。
ニップシールドを病院でもらい、少しだけ痛みは軽減されましたが、母乳がうまくあげにくかったり、気が付いたらニップシールドの中に血がたまっていることもありました。
1日8回はある授乳タイムの激痛が毎回恐怖で、深呼吸して手にぐっと力を入れて臨んでいました。
ただ、それでも痛くて、そのまま歯を食いしばって数十秒はかたまったまま動けませんでした。
3か月頃には皮膚が強くなってきたおかげで切れることも少なくなって痛みも軽くなり、少し気楽に授乳できるようになりました。
思ったように母乳が出ない
出産直後は全く母乳が出ませんでした。
出なくても吸わせることが大事だと看護師さんから指導を受けて、とにかく10分間ずつくわえさせてみました。
生まれたばかりの赤ちゃんなので、母乳が出ないと吸うことをすぐやめたり、吸うことに疲れて途中で寝たりしてしまい、10分間吸ってもらうことはなかなか困難でした。
母乳が出るまで頑張ろうと奮起しているなか、ちょうど運の悪いことに、生後2日目、子どもに異常が発見され、念のために大病院へ搬送されることになりました。
私は出産後のためそのまま産婦人科に残らざるをえず、子どもとは数日間離れ離れになってしまいました。
(結果、数値の異常は一時的なものだったので、それ以降現在まで子どもに異常はありません。)
その頃ちょうど初乳が出て、「初乳が大事」と漠然とした知識だけあったので、初乳をあげることができなかったことが不安で不安で仕方がありませんでした。
また、離れ離れになっている間、届けられるほどの母乳量はなかったため、母乳を届けるということもできませんでした。
それから1週間ほど経って、母乳は徐々に出るようになりました。
生後1か月検診時には、看護師さんに「十分な量出ていますね」と言われました。
今考えると、私の母乳は早くもこの頃(1か月)がピーク量だったと思います。
また、私はあまり胸が張るという感覚がなく、「胸が張らない」ということについてもかなり悩みました。
しかし、こちらも生後1か月検診時、産婦人科のお医者さんに「胸が大きい人は張る感覚がない人が多いよ。張らなくても母乳は出るから大丈夫」と励ましてもらい、気持ちが楽になりました。
また、先ほど記述したとおり、乳頭が切れて出血することが3か月頃まで頻繁に続きました。
たまった血を赤ちゃんが飲んでしまうのもあまり良くないとのことで、出血したら休ませるように産婦人科で指導を受け、1日8回ほどの授乳のうち、何度か片方の胸を休ませることになりました。
出産直後に産婦人科で指導されたように、吸わせ続けることが母乳を安定して出すために大事だそうなので、それを考えると、これも母乳がなかなか出ない要因のひとつだったのではないかと思います。
情緒不安定
自分を責める日々で、泣いてばかりでした。
いま思えば、産後うつのような状態でした。
不安定な心のまま、慣れない育児、足りない睡眠で、母乳が出ないことに対してどう対処したらいいのかわからず、モヤモヤしたものが涙として出てきていたように思います。
母乳が出ず、ミルクを作るたびに罪悪感に苛まれました。
日に日にミルクの量が増えていくことがかなりのストレスでした。
完全母乳の人はそれはそれで悩みがあることも承知していますが、完全母乳が羨ましいと思っていました。
ミルク育児は母乳育児より時間がかかります。
お湯を沸かしてミルクを溶かして、氷水で人肌まで冷まし、ミルクを10分ほどかけてあげて、哺乳瓶を洗って消毒作業をして、ようやく終わりです。
母乳が完全に出なくなるまでは母乳とミルクの混合育児だったので、それにプラスして10分ずつ母乳をあげる時間も加わります。
夜中に起きて一度の授乳タイムに、なんだかんだ50分近くかかっていたのではないかと思います。
ただでさえ少ない睡眠時間が削られてしまうのはツラかったです。
母乳育児であれば、夜中に授乳してすぐ眠れるので、すごく羨ましく感じました。
また、母乳が出ないと子どもは泣いて騒ぎます。
母乳をあげようとしても泣いて哺乳瓶を求められると、自分が子どもに拒否されてるように感じてしまいました。
「私のことが嫌いなわけじゃないんだから」と、心の中で自分を落ち着かせようとしますが、大きい声で泣き叫ばれてしまうと、いつも悲しい気持ちになりました。
子どもが泣くたびに、「母親失格」と言われているような気持ちになりました。
まわりの人は母乳が出ないことを責めませんでした。
しかし、誰に何を言われても、そのときの私の心が軽くなることはありませんでした。
「母乳育児じゃないと」という思いに縛られていました。
夫から「母乳でもミルクでもちゃんと大きくなるから大丈夫だよ」と言われましたが、そのときの私は「そうだよね」なんて、明るく言える精神状態ではありませんでした。
「当事者の私の気持ちが分かるわけない」と、モヤモヤしてしまいました。
言われた言葉が嫌だったのではなく、あのときは何を言われてもそういう荒んだ気持ちになっていただろうと思います。
いま冷静になって思い返せば、私には理解を示し優しく声を掛けてくれる人たちがいて恵まれていたと思います。
お金の問題
母乳の出が悪いということは、必然的にミルクに頼るしかありません。
ミルク育児は母乳育児に比べてお金がかかります。
ミルクは粉タイプ、液体タイプ、キューブタイプがありますが、粉タイプが一番お安く買うことができます。
しかし、粉タイプの大容量800gの大缶も、月齢が進めば早いときは1週間で1缶無くなってしまいます。
また、細かく考えると、ミルクを溶かすお湯や哺乳瓶を洗う水、哺乳瓶の消毒などで水を使うことが増えるので、水道料金も高くなってしまいます。
その後
4か月頃、母乳の出がさらに悪くなり、以前にも増して授乳時に子どもが騒ぐようになりました。
なるべく頻繁に長くくわえさせて頑張ってはいましたが、そのまま母乳は出なくなりました。
そこからは完全ミルクでの育児に切り替えになりました。
それ以前にも「母乳出てる?」といろいろな方に訊かれていましたが、完全ミルクになってから「母乳出てる?」と訊かれたときに、「いえ、ミルクです。」と答えると、「もう終わったの?早いね。」と悪気なく言われることがありました。
悲しくて少し悔しい気持ちにはなりましたが、「その通りだもんなあ」と自分を納得させるようにしました。
良かったこと
ミルクでの育児にもメリットはあります。
私が思うメリット4つを以下に記します。
1.赤ちゃんの寝つきが良くなる
母乳よりミルクは腹持ちがよく、よく寝てくれるそうです。
我が子は完全ミルクになる前からねんねトレーニングをして夜中は長く寝てくれていたので、ミルクのおかげというのはあまり実感できませんでしたが、そういうこともメリットのひとつとしてあるようです。
2.誰でもあげられる
母乳であれば授乳タイムに必ずママがいなければなりません。
月齢が低いと授乳間隔も短く、授乳を求めていつ泣き出すか分からないため、片時も赤ちゃんの元を離れられません。
しかし、ミルク育児の私は病院に行くことがあったときにも、子どもを夫にあずけて、時間をさほど気にせず外出できました。
また、保育園の見学に行ったとき、保育園の先生に「いま母乳ですか?ミルクですか?」と訊かれ、「もう完全にミルクです・・・。」と答えることがありました。
そのとき保育園の先生は「ミルクなんですね!有難いです。」と返してくれました。
(ちなみに私は、申し訳ないような気持ちで答えたのですが、先生の意外な反応に救われた気持ちがしました。)
保育園にあずけるときは、元からミルク育児だとスムーズにあずけられるようです。
3.どこでもあげられる
母乳は人前であげにくいですが、ミルクであれば来客時にも外出時にもあまり気にすることなくあげることができます。
4.好きなものが食べられる
授乳中は食べ物にもかなり気を使っていましたが、母乳が出なくなってからはその必要がなくなったので、それは楽だったと思います。
いま思うこと
先日、子どもが寝ているのを見た夫が、「あれだけ母乳が出ないって悩んだけど、今こんなに元気に大きくなって良かったね」と話してきました。
そのとき私は、「ああ、そうか。そういえばすごく悩んだな」と、過去のこととして明るく受け止めることができました。
また、子どもが生まれた後、「どう?母乳出てる?」と訊かれる機会がとても多くありました。
自分が経験していなければ、今後の人生で「どう?母乳出てる?」と考え無しに訊いていたかもしれません。
しかし、その言葉が、母乳が思ったように出ない母親に対してどれだけ負担になるかを実体験させられました。
自分の何気ない一言が人を苦しめることがあるのだと、思い知らされました。
これは今回のことに限った話ではなく、いつもいつも反省を繰り返す日々です。
少なくとも、私は今回経験したことを踏まえて、乳幼児を育てている母親に母乳のことを訊くのはやめようと思いました。
とくに、産後はやはり少しのことでも気にしやすかったように思います。
そのときの自分は普通のつもりでも、後から思えば普通ではありませんでした。
かなりナイーブになっていたと思います。
医学的なことは私には分かりませんし、母乳が出るのであれば母乳の方が良いのではないかと思います。
しかし、私のように母乳の出が悪い方や、働きに出なければならず母乳をあげられない方などは、自分を責めておられる方もいらっしゃるかもしれません。
私はそれを経験したからこそ、いま私の子どもがとても元気だということを伝えたいと思います。
いま”うまくいかない”母乳育児で悩んでいる方々の気持ちが、少しでも楽になりますように。

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